特別養護老人ホームで介護福祉士として働く中で、残念だなと思うポイントを紹介します。ただし、以下は私自身の個人的な感想であり、また私が現在働いている労働環境(施設環境)であるため、すべての介護職の方に通ずるものではありません。あくまでも参考としていただければと思います。
ポイント①介護職の給与は本当に給料は低い?
給与の話となると『介護福祉士になって良かったと思うこと』でも紹介したのですが、給与が低いと思うかどうか、そして本当に低いのかどうかは、その人の置かれている状況により大きく異なる部分もあり、介護職だけが一概に『めちゃ低いよ!安いよ!』とも言えません。実際、高卒で社会人となる若い世代についてはむしろ私の会社の方が一般的な小規模の会社や工場勤務よりは給料が高い傾向にありますし、大卒でも資格を持って入職した場合、20代でもらえる給料は他の会社と比べると大きな違いが無いようにも思います。
確かに、介護保険がスタートしてそれ以後しばらくは介護職の給与は低水準にとどまっていたのは事実です。ところが、昨年からのコロナのパンデミックも含めて、昨今の時代の変化は大変著しく、どの業種がどれくらい低いのか、高いのかを語ることが難しくなったように思います。
介護職員処遇改善手当・介護職員等特定処遇改善手当の恩恵
また、介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の存在はとても大きく、私個人の場合、それに該当する金額はこの記事執筆時点で年額換算52万8千円、大まかな年収額の360万円と合わせると、413万円ほどの年収となります。
確かに同年代の平均所得と比べると見劣りはしますが、年間120日の休日と、一般企業と比べて残業が少ない、そして能力給や頑張った分だけ所得に上乗せされる歩合制的なものも(ほとんど)ないと仮定すると、この金額は私からすれば妥当なものだと思います。
昔と比べて今の世界では価値観は多様化し、純粋に金額だけで測ることができるものは以前より少なくなっており、むしろ金額では測れない部分にお金以上の価値を見出す若い世代も多くなっているのが現状です。これは決して『介護職の給与はそんなに低くないよ!』と言いたいだけの言い訳では無く、現実として↑でざっくりと提示した年収413万は、現在の日本におけるヘ金年収のど真ん中なのが事実で、それを言い換えるとそこそこ普通に生活していけるだけの年収だと言える根拠でもあります(もちろん多くの贅沢や、十分な預貯金ができるわけではありませんが)。
それとこれは余談として頭の片隅に置いておいていただければよいのですが、年間の休日が多いということは自由時間が多いとも言えます。これを、副業や副業につながる自己投資に費やすとしたらいかがですか?実際私は、空いた時間を使った副業(主に自宅でできること)と資産運用で、上記の年収にプラスして年間で100万円前後の収入を得ています。そしてそれを、今後さらに増やしていきたいと思っています。
つまり『介護の給与がそんなに低くない』と私が考える理由は、能力給や歩合制が無いのであればそれに代わるものを自分で見出せばいいだけの話だと思うからです。現実として、今では厚生労働省が副業を推奨する時代であり、副業を認める会社が大企業を含めて多くなってきています。
『介護職の給与が低い』は働く事業所によって左右されるという事実
ただし!これだけは忘れないでください。私は現在、普通よりも恵まれた待遇の特別養護老人ホームで働いています。実は介護業界ほどブラック企業が多いのも周知の事実で、 事業所によっては介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算がもらえていない場合もざらにあると聞きます。事実、介護職員等特定処遇改善加算がスタートして数か月後に行われたアンケート結果では、実に全国の介護事業所の3/4の職員が介護職員等特定処遇改善手当を受け取っていないという調査結果が報告されました。介護職員処遇改善手当だけでなく介護職員等特定処遇改善手当も無ければ、当然のことながら給与が低いと言わざるを得ませんので、これから介護業界で働こうとする場合や転職を考えている場合は、抑えるところはきちんと押さえておく必要があります。
介護職の給与に対する私なりの結論
私は、介護職の給与はブラックではない一定の基準を満たす事業所であれば、そこそこ妥当なものであり、低くもなく高くも無いと思います。まさに、現状日本の平均的な給与です。もし給与が低いという意見があるのならば、その理由は能力給や歩合制という他の業種で見積もられる制度がほとんど無いことが主な理由であり、でも実際にはそれに代わる国の制度としての介護職員処遇改善手当・介護職員等特定処遇改善手当もあり、それをまずまず埋め合わせるだけの金額に達していると実感しています(ただし、処遇改善手当はより重労働とされる特別養護老人ホームに手厚く支給されるよう制度設計されており、デイサービスなどでは加算率が低く設定される傾向にあります)。
ポイント②昇進の機会が少ない
これは中小零細企業にも言えることかもしれませんが、介護事業所においては小規模なところが多く、昇進の機会がとても少ないと言えます。例えば、ある事業所において現場で働く介護福祉士の昇進は、ほとんどの場合『フロアリーダー(ユニットリーダー)』⇒『主任』で終わってしまい、設けられている場合には主任の前に『副主任』、主任の後に『介護長』といった管理職が設けられてはいますが、それで終わりです。さらに、それらの管理職は彼・彼女らが長く居ればそのポストは空かず、私の施設の場合のように、『今の主任よりもユニットリーダーの方が主任に向いてるのに』とか、『介護長なんか要らないじゃん!』といった状況になる事もあります。
上位?資格を取っても・・・
例えば、介護福祉士の上位資格に選定介護福祉士という資格がありますが、これは国家資格ではなく、ほとんどの介護事業所ではこの資格を持ったからと言って昇進や昇給制度を設けているところはほとんどありません。また、資格を取ることができる条件として『実務経験〇年以上』というのがよくあるのですが、一定以上の現場経験を積まなければ取得できない資格としては介護福祉士よりも介護支援専門員(ケアマネ、ケアマネージャー)の方が長いキャリアが必要であり、そういった意味では『ケアマネ>介護福祉士(の上位資格』という構図が成り立っている感がいなめません。
かといって、ケアマネになれば給与が増えるのかといえば、・・・なんとも微妙なところです。むしろ、ケアマネは定期的に研修を受けねばならず、それには一定の受講料が必要となり多くの場合は自己負担。さらには所属する組織や事業所によっては、もし夜勤が無くなったとしても日常業務が増えたり、居宅ケアマネの場合は休日も仕事が舞い込んだりと、一般的な意味での昇進・昇給のメリットがどこまであるのか正直疑問に思うところも多々あります(逆に夜勤が減る、無くなることで減給となることも!)。
昇給は事業所次第
昇給については、すでに一般企業でも旧来の年功序列を無くす企業が多いため状況は同じかもしれませんが、介護業界でも決して期待できるほどの昇給は見込めないと思っていた方が良いと思いますし、そもそも昇給に合致する制度や資格が未だに未成熟な業界であるため、現状では昇進・昇給は事業所次第、としか言いようがありません。
ポイント③変革に弱いことが多い(かもしれない)
私が一番危惧しているのは、介護業界が変革にとても弱いという実態です。介護にも小規模な事業所から株式会社のような大規模なものまでいろいろあるのですが、例えば↑で紹介したような介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算の認定資格がある事業所でも、まだそれに関連する手当を職員が受給できていないという事例が多くあります。これは、国の制度変更に対応できるだけの人員が確保できない(仕事が追い付かない)ことが主な理由として挙げられます。
それにも関連し、世界的な潮流となっているDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、介護業界にもDXは容赦なく押し寄せています。最たる例として、介護報酬に新たに『LIFE加算(科学的介護推進体制加算)』が制定されました。LIFE加算とは、国の新たなデータベース『LIFE』への情報提供を要件に、要件を満たした事業所に一定の金額を付与(=職員に授与)するという制度です。
LIFE加算と業務の効率化は一心同体である事実
例えば、これまで記録業務のほとんどすべてを手記により行っていた施設があったとします。LIFE加算が新設されたことで、それではLIFE加算に該当する業務を全てデジタルに置き換えようか!となったとします。
これで、すべてが解決すると思いますか?当然、答えは『否!』です。
記録業務をデジタル化すること自体は、私の経験からしても大きく業務効率を上げることにつながります。問題なのは『どうやって移行するか?』という、手順の問題です。
まず、LIFEに通ずるように記録業務を再編する必要があり、さらにはすべての職員が入力業務を行えるようになる必要もあります。さらに、LIFEは現場の記録だけでなくすべての専門職種(看護、栄養ケア、ケアマネ、機能訓練)に及び、言うなればこれまで行ってきたマニュアル業務をほとんどの場面でデジタル化に移行する必要があります(LIFEに対応できる手法を用いて、という条件付き)。