私たちは40歳になると、被保険者として介護保険に加入し、介護保険料の支払いがスタートしますが、そもそも介護保険とは何なのでしょうか?私たちは、いったいどのような制度に対して大切なお金を保険料として支払っているのかご存じですか?
ここでは、介護保険制度について、その概要をわかりやすく解説します。
1.急速に進む日本の高齢化社会
1-1:旧制度の問題点
2.介護保険制度の概要
2-1:介護保険制度の『保険者』
2-4:介護保険制度の『被保険者』
2-5:介護保険サービスの対象者(受給権者)
3.保険給付の種類
3-1:予防給付
3-2:介護給付
3-3:市町村特別給付
4.介護サービスの自己負担金
5.まとめ
急速に進む日本の高齢化社会
日本では急速に高齢化社会が進んでいます。寝たきりの老人や認知症などの高齢者の数だけではなく、介護する人の高齢化も進んでいき、もはや家族だけでは介護を支えきれない状況となっています。
さらに要介護状態の重度化と、平均寿命が長くなることによる事態の長期化も予想される時代背景の中、介護者を含めての『生活を支える介護』への制度立て直しが急務となってきたのです。
旧制度の問題点
そもそもそれまでは、老人福祉と老人医療が切り離された制度運営がなされていました。
老人福祉
例えば、特別養護老人ホームや訪問介護などの老人福祉においては、市町村がサービスの種類を決定するため利用者がサービスを選択できず、競争原理も働かないため画一的なサービスしか受けることができませんでした。また、所得に応じた利用料負担のため中高所得層にとってはかなり重い負担が強いられていました。
老人医療
老人医療については制度が不十分であったために、そもそもサービスを提供する施設自体に『生活の場』としての基礎整備を求める規定が無く、食堂や浴室も無いことも普通にありました。
また、老人福祉施設など介護施設を利用するよりも一般的な入院の方が利用者負担が低かったため、一般病院における『社会的入院』が増えるなどの問題もありました。さらに、老人福祉施設に比べて医療費の方が高額となるため、結果として医療費の無駄にもつながっていたのです。
社会的入院とは、「入院治療が終わっても、家族・地域の福祉施設などの受け入れ先がないため退院することができないことから起こる、一般病院での長期入院」の事を言います。
このように、老人福祉・医療をめぐっては旧制度での対応に限界があり、そこで導入されたのが介護保険制度だったのです。
介護保険制度の概要
介護保険法により定められた介護保険制度は、平成12年4月からスタートしました。制度の目的と主旨は↓のようになります。
- 介護が必要になった高齢者を社会全体で支える
- 社会保険方式により給付と負担の関係を明確にする
- 利用者の選択により、保険、医療・福祉サービスを総合的に受けられる仕組みとする
- 介護を医療保険から切り離して、社会的入院解消の条件整備を図るとともに社会福祉基礎構造改革の第一歩とする
介護保険制度の『保険者』
介護保険制度の運営主体(保険者)は全国の市町村と特別区(東京23区)で、国、都道府県、医療保険者、年金保険者が重層的に支え合っています。
介護保険制度の『被保険者』
冒頭にもあるように、日本国民であれば40歳になると介護保険の被保険者として自動的に介護保険に加入し、保険料を支払う義務が生じます。そして、被保険者には保険料の納付義務があり、任意で脱退することはできません。
ここでいう被保険者とは
- 第1号被保険者(65歳以上の方)
- 第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)
で、介護保険法では配偶者や世帯主にも連帯納付義務があると定められています。
介護保険サービスの対象者(受給権者)
『介護保険』はその名の通り『保険』であり、所定の手続きを経て『対象者である』と認定された方が、『その方に必要だとされる』介護保険サービスを利用できます。つまり、誰でもどんなサービスでも受けられるわけではなく、必要な人に、必要なだけのサービスが受けられるのです。具体的な受給権者は下記のようになります。
65歳以上の方
寝たきりや認知症などにより、介護を必要とする状態(要介護状態1~5)になったり、家事や身じたく等、日常生活に支援が必要な状態(要支援状態1、2)になった場合、市区町村(保険者)が実施する要介護認定において介護が必要と認定された場合、いつでもサービスを受けることができます。
40歳から64歳までの方
初老期の認知症、脳血管疾患など老化が原因とされる病気(※特定疾病)により、要介護状態や要支援状態になった場合に、介護保険の対象となる特定疾病により介護が必要と認定された場合は、介護サービスを受けることができます。
以下が特定疾病となる16種類の疾病となります。なお、特定疾病である場合であっても、介護給付や予防給付のサービスを利用するには要介護(要支援)認定を受ける必要があります。
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脳血管疾患
- 後縦靭帯骨化症
- 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
- 骨折を伴う骨粗しょう症
- 閉塞性動脈硬化症
- 多系統萎縮症
- 慢性関節リウマチ
- 初老期における認知症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
- 早老症
- 末期がん
保険給付の種類
予防給付
要支援1および2と判定された場合に受けられるサービスで、介護給付に比べて家事代行型のサービスに制約があり、よりリハビリテーションを重視したものとなっています。また、施設サービスは受けることができません。
介護給付
要介護1~5と判定された場合に受けられるサービスで、居宅サービスと施設サービスがあります。
市町村特別給付
介護保険法で定められた保険給付以外に、市区町村の独自の条例などで定めた給付の事を言います。自治体により内容は異なりますが、主なサービスとしては移送や配食サービスの他、寝具乾燥やおむつ支給などがあります。
介護サービスの自己負担金
居宅支援事業など、介護保険から全額給付(無料)されるものもありますが、実質的な介護サービス(入浴、デイサービス、ショートステイなど)を受けるには、原則1割の自己負担が必要です。
ただし、前年度の所得に応じて自己負担率が2割あるいは3割になることもありますので、実際にサービスを受ける際には、ケアマネージャーや地域包括支援センターなどに相談するなどして、事前に負担金を把握しておく必要があります。
介護保険制度のまとめ
ここまで、おおまかですが介護保険制度について解説してきました。日本が世界でも稀に見る急速な高齢化社会を迎え旧制度のままでは介護福祉を支えることに限界があり、被介護者だけでなく介護者自身の生活も支える制度として介護保険制度が整備されたことが分かっていただけたと思います。
ただ、詳細な点について介護保険制度は年々改変が加えられています。可能な限り介護とのトリセツでも最新の情報をお伝えしたいと思いますが、内容が追い付かない事もあるかと思いますので、予めご理解いただければと思います。